Mr.Kabuskyの雑論

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村上春樹ファンから見た、ハルキスト

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私は村上春樹の作品が好きだ。大抵の本は読んでいる。中でも、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」や「ダンス・ダンス・ダンス」は定期的に読み返している。ただ、彼の作品全てが好きという訳ではない。腑に落ちない点や共感できない部分もある。それでも、彼の作品が出たら購入するし、ひと通り目を通す。

 

 

 ハルキストは異なる。彼らは村上春樹の描く世界観に完全に浸り、彼の作品に登場するキャラクターに自分を重ね合わせる。主人公の「ぼく」と同じように朝食には手軽なサンドイッチを食し、日常の雑事に何らかの意味を見出しながら取り組む。

 

都内の小洒落たバーに足を運び、カウンターに独り座りビールを飲む。思索に耽ることが好きで、「あるいはそうかもしれない」などと思ってみたりもする。好物はコーラがけのホットケーキで、ノーベル文学賞の発表が迫るとソワソワし出す。

 

私は村上春樹のファンではあるが、ハルキストではない。作中の世界観に影響され、趣味・趣向が変わったなんてこともない。サンドイッチはローストビーフが好きだが、それは作品を読む前から好きである。アイスピックを見ると頸動脈が気になったり、中央林間を見ると牛河を思い出したりはする。

 

それでも、日常生活の中で作品に影響された言動を取ることはない。大体、「やれやれ」なんて言うわけがない。あくまで作品の中だけで使用が許されたセリフなのである。現実に「やれやれ」なんて言う人間が居たらイラッとするに決まっている。「あるいはそうかもしれない」などと言われたら、そういう人間とは距離を置いた方が良い。

 

ハルキストは熱狂的な村上春樹ファンを指すらしいが、通常の村上春樹ファンとは一線を画する存在だと思って欲しい。村上春樹ファンはあくまで作品が好きなのであって、作中のキャラクターに心酔している訳ではないのである。

 

仮に作中のキャラに共鳴し、同じ行動を取りたいと思っても、あからさまに再現してはいけない。さり気なく行動に反映させ、さも前からやってますよ的な雰囲気を醸し出すべきである。大人の基本的なたしなみである。

 

昔、身近な人間で村上春樹に心酔している男が居た。小説家になりたいらしく、定期的に小説を書いては周りの人間に読んでもらっていた。彼の書く作品はどれも「春樹的」で、キャラクターの風貌や身なりについて、くどいほどに丁寧に描写していた。家から歩いて5分程度で到着するような場面でも、秒単位で移り行く内面描写を事細かく書き記していた。

 

私は、「やれやれ」と思った。村上春樹の文体は村上春樹固有のものである。他人が似たような文体で挑戦しても、単なる猿真似でそら寒いだけである。あれは彼だけに許された文体なのだ。私はその後、例の彼が小説家になったという話は聞いていない。

 

ちなみに、村上春樹の作品を読んだことがない人には「1Q84」をお薦めしたい。わりと長い作品だが、読みやすい上に内容的にも面白いと思う。特に携帯電話もなかったアナログの時代の話で、同じ時間軸を複数の視点で描いた場面は「流石だなぁ」と感心した。